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24年ぶりのCaffey Society



 放射線科または小児科の医者なら誰でもDr. Caffeyの名前は知っていると思う。《万一Caffeyを知らない人は、小児放射線のバイブルCaffey’s Pediatric X-Ray Diagnosis, Caffey-Kenny Syndrome (Kenny-Caffey Syndrome),Caffey-Kempe Syndrome(battered child syndrome−被虐待児症候群−のことです)を検索してみてください。》 しかし、Caffey Societyのことはあまり知られていないのではないだろうか。

 Googleで”caffey society”を検索するとヒット数は、(私の診療所のHPを含めて)わずか44である。ちなみに北米放射線学会“radiologic society of north america”では18,800,(米国)小児放射線学会”society for pediatric radiology”では21,200がヒットする。 この会は、Dr. Caffeyの弟子や友人を中心にした会員数約50人の、きわめてexclusiveな集まりで、学術団体であると同時に密度の高い親睦団体でもある。日本人では藤岡睦久先生(獨協医大名誉教授)と私がcorresponding memberである。


 そのCaffey Societyに24年ぶり出席してきた。今年の会場はミシガン州Traverse Cityというこれまた(多分誰も聞いたことのない)小さな町であった。

 行く気になった主な理由は、元の職場である神奈川県立がんセンターから、たまたま転送されてきた案内状の余白に、今回の主催者でピッツバーグ時代の同僚Mike DiPietro(ミシガン大学のJohn F, Holt Collegiate Professorというすごい肩書きを持っている。)の「クニオ、いい所だから是非来て」という走り書きがあったためである。

 今回どのぐらいの人たちが参加しているかというと、例えば引退しているがCurrarino triadのDr. Currarinoがいたり、11月に新版が出る『Caffey Book』の進行状況報告で「執筆している人」と聞かれると、約1/4が手を挙げるといった具合である。

 会の冒頭で、昨年亡くなったメンバーのDr. H. Taybi(症候群の教科書や、Rubinstein-Taybi症候群で有名な)のために全員が黙祷した。

 昔は参加者全員が発表し、症例報告1例ずつ2回発表する形式であった。行ってからわかったのであるが、現在は30分の発表が2回ずつ割り当てられていて、まとまった話をするか、症例発表ならスーパーケースを5-6例ずつ出す形になっていた。若いメンバーは後者の形で(ひたすら緊張して)やっていた。聴衆の影響力を考えれば、今後の昇進や引抜きに直接影響するのであるから、若手が緊張するのはもっともな話である。

 仲良しクループではあるがあくまでも極めて高レベルな学術団体であり、暖かい歓迎も友情の復活も、善意と微笑、美辞麗句だけでは意味がない。すべては内容のある発表をすることが前提であるのは言うまでもないことだ。いくら旧知が多いとはいえ並み居る大教授連中を前にこれはさすがにきつかった。メンバーもかなり入れ替わっており、それらの人間にとって、当方は昔ピッツバーグにいただけの縁で世界の反対側からやって来た得体のしれない人間であり、せっかく遠いところをやって来たのだから一応はニコニコ相手しているだけの相手であるのは当然である。

 そんなわけで一回目のプレゼンテーションはこの年になって何をいまさらと言うくらい大いに緊張した。

 前の晩にパワーポイントをいじって、Dr. CaffeyやDr. Taybiの思い出話(これをやるだけで、会の中では大きな顔が出来る)や、冗談の種やらを交え、文献も追加して発表の構成を全面的に修正した。(パワーポイントとインターネットの威力である。)また、前日出た「磁石の誤嚥」に引っ掛けてインターネットで文献をさがし、Yamanouchi Methodも紹介した。(早速反応があった。)

 ともかくも友誼の復活、新たな友情、様々な思い出と、気温20度以下湿度ほぼゼロの ミシガンで楽しい1週間を過ごすことが出来た。実感できたのは、目標の設定、準備と努力、達成というプロセスを持つことは、ボケの防止に役立ちそうなことである。政治家や芸術家たちがいつまでも若々しいのは、動機は何であれこの過程にのめりこんで脳の活性を保っているのが大きいのではないかと思われる。

 終わりにこのような贅沢が可能になるために必須な貴重な症例の提供、準備に協力していただいた成育医療センターのスタッフに感謝します。

小田切 邦雄